ぼくのペット
※この作品には監禁・拘束・食糞・飲尿・首絞め・嘔吐などの表現が含まれます。
 僕にはペットがいる。飼い始めた頃は短髪だったけれど、近頃では僕の好みの感じに伸びてきた。そろそろ一度切ってやらなきゃいけないと思ってる。瞳は深く暗い黒色をしていて、表情はあまりない。でもそんなクールぶってる所が可愛いんだと思う。
 家に閉じ込めたままの彼の肌は青白くなってきた。前のような陽に焼けた健康的肌色も好きだったけれど、彼は今の色が似合う。
 心配するところと言えば食が細いところだろうか。家で飼い始めた頃から食事を拒むようになった。それでも無理矢理食べさせるんだけど、後から戻してしまう事も多い。
 僕は今日も、彼の元へと向かう。

 とあるマンションの一室は、彼を飼うための秘密の部屋だ。玄関から入ってすぐの場所に小さなキッチン、風呂とトイレへ繋がる扉のある廊下の奥には部屋が一つ。単身者向けにはよくある構造だ。部屋の窓は目張りしていて、カーテンも閉め切ったまま。だから、昼間でも太陽の光はあまり入ってこないし、夜になれば何も見えないくらい真っ暗になる。
 その部屋で彼を飼っている。
 部屋の電気をつけると彼の姿が露わになる。電気をつけるのは僕が居る時だけだ。彼一人の時に電気をつける事は許していない。
 何も身に纏っていない生まれたままの姿でアイマスクをし、ガムテープで口を塞がれ、手を背中で束ねて手錠で拘束されたまま部屋の片隅で転がっているのが、僕の大好きな彼だ。
 キッチンのある廊下には段ボールやコンビニにのビニール袋に詰めたゴミなんかが無造作に置いてあって散らかっているが、彼のいる部屋には何もない。何もない部屋の隅のポールを立てて、天井と床に固定している。そのポールに、彼の手錠を通していた。
 彼のいる部屋へ一歩足を踏み入れると、糞尿の臭いが鼻をつく。他人のものなら御免だけれど、彼のものならその臭いでさえ僕には心地良い。昨日、ちゃんと身体を洗ってやったはずなのに今日も彼は尻を糞尿で塗れさせているんだから可愛いものだ。彼の近くの床には大便も転がっている。既に乾いてしまっているが、目を凝らせば小便の染みもついている。
 昨日、帰る間際に入れたイチジク浣腸が効いたみたいで嬉しい。彼が羞恥に耐えながら汚物を漏らすところを見ているのも楽しいけれど、たった一人残された暗闇の中で身体を拘束されたまま苦しみながら自分の身体を汚していたのだと思うとそれだけで興奮する。
「――ぅう……」
 僕の気配に気付いたのか、彼は冷たいフローリングの上で身動ぎした。
 僕は彼に歩み寄り、その口を塞ぐガムテープを勢いよく取り去った。べりべりぃ、と派手な音がしたけれど気にはしない。そしてアイマスクを取り、一日ぶりのご対面だ。
「やあ。調子はどう?今日はご飯、食べるよね?」
 昨日櫛を入れてやったのに床に転がしていたせいで髪はぼさぼさだ。その髪を手櫛で軽く整えながら、彼の表情を窺うが、彼は僕からわざとらしく目を逸らしたまま何も反応しない。
「ご飯、食べるよね?」
 僕はもう一度同じことを訊ねる。
 けれど、やはり彼からの返答はない。最近、いつもこんな感じだ。飼い始めた頃はもう少し威勢がよかったのだけれど、一体どうしたものだろうか。やっぱり、食欲が落ちている事も何か関係があるのだろうか。何か悪い病気でなければいいのだけれど。
 もしも悪い病気なら病院に連れて行くのが飼い主の務めなんだとは思うけど、しばらくは様子を見てみようかと思っている。
 僕は一度彼から離れてキッチンへ行くと、持ってきていたコンビニ弁当の封を切って電子レンジにかけた。この電子レンジも、彼が使う事は許していない。というか、僕がいない間は彼には手錠をかけて部屋の隅に繋いで動けないようにしてしまうし、この部屋とキッチンのある廊下との間の扉も鍵をかけてしまうから、部屋から出る事自体が難しくなる。
 彼に不便を強いている自覚はあるけれど、彼を飼っていくには仕方のない事だから、多少は我慢してもらわないとね。それに、なるべく毎日顔を出すようにしているんだし、僕だって出来る限り彼に尽くしているんだ。
 電子レンジから電子音が鳴り響く。どうやら弁当をあたため終わったらしい。僕はそれを取り出して再び彼の前へと戻った。
 彼の前へ弁当を置くと、彼はようやくそれらしい反応を見せる。と言っても、首も動かさず視線だけで弁当を追っただけだ。
「食べるよね?」
 三度目の質問を繰り返すと、彼は再び視線を逸らす。
 言いたい事があるなら直接言えばいいのに、そんな反応ばかりされていてはいくら温厚な僕でもさすがに苛々してくる。
「食べないと死んじゃうよ?」
 語気が荒くなってしまいそうなのを必死に抑えて、冷静を装って彼に語りかける。でも、やっぱり彼から反応はない。
「――」
 と、思ったけれど、彼の唇は小さく動いて聞き取れはしなかったけれど声も出ていた。何やら言葉を紡いでいたらしい。
「なに?聞こえなかったからもう一度言って?」
 彼の肩に手をかけて、声がよく聞こえるようにと口元に耳を寄せる。触れた彼の身体は、昨夜浣腸を入れて苦しんだせいか汗でべとついていた。
「死んだ方が、マシだ」
 彼は震える小さな声でそう言った。声が掠れているのは昨日から水分を口にしていないせいだろう。
 瞳はどこか虚ろで、恐らくきっと、それは本心なのだろう。
「死なせてあげようか?」
 彼が望むなら、死なせてあげるのもいいかもしれない。
 僕は彼が大好きだし、こんなに尽くしてるのになんで死んだ方がマシだ、なんて事を言われるのか皆目見当もつかなかったけれど、それでも彼の望みなら出来る限り叶えてあげたかった。
 彼が死んでしまうのは嫌だけれど、僕の手で彼の最期を迎えるならそれも悪くない。
 なのに、彼はまた反応しなくなる。
「死にたくないなら食べようね。自分で食べないなら僕が君に食べさせる事になるよ?どっちがいいの?」
 彼の瞳が、一瞬だけ僕を睨んだような気がした。
「食べたく……ない」
 小さな小さな声で、彼は言う。やっぱり声は掠れていて、これは食べ物より先に水分を与えた方がいいかもしれない。僕は再び立ち上がってキッチンに向かい、弁当と一緒に買ってきた二リットルのミネラルウォーターのペットボトルを取って彼の元へと戻った。
「お水は飲むでしょ?」
 彼の返答は待たない。どうせ何も反応しないか、飲まないかどちらかに決まっているからだ。飼い始めた当初から彼の反抗期は続いていて、僕の言う事を素直にきいた事は今までで一度もない。
 彼を仰向けにし、彼の糞尿で汚れるのも構わず、僕は彼の腹の上に馬乗りになる。手錠を嵌めた腕が背中の下敷きになってしまっていて、痛そうだとは思ったけれど、これも彼の為なのだから仕方ない。
 ペットボトルのキャップを外し、彼の顎を固定するとその唇にペットボトルの飲み口をあてがった。何をされるのか悟った彼は身を捩って暴れてみせるけれど、普段からこの部屋で一歩も動かず過ごし、挙句飯も拒んで体力も落ちているせいでその抵抗に力はない。首を振って逃れようとしているのはわかるけれど、僕の片手で抑えられる程度の力だ。僕の背後では足が宙を蹴っていた。
「水分って、生きていくためには必須らしいしね。美味しく飲んでね」
 言いながら、ペットボトルの尻を持ち上げ彼の口へと水を流し込む。
「うぐぁっ……」
 蛙が潰れたような彼の悲鳴は、途中で掻き消えた。勢いよく流し込みすぎたせいで、半分程は口から溢れてしまっている。それでも少しは彼の胃まで流れているようで、彼の喉は何度か上下した。
「ぅごぁっ……っげほっ……」
 時折むせているのは水が気管の方へ流れてしまっているからだろか。喉は嚥下するのとは違う痙攣を見せ、彼の胸が大きく上下して上体が跳ねる。口から漏れるだけじゃなくて、鼻の穴からも漏れた水が彼の頬から髪を濡らして床にまで零れた。それでも構わず、僕は水を流し続ける。
「ふごぁっ……」
 ペットボトルを垂直に持ち、減っていく中の液体を見るのは楽しかった。
「僕がいる時にたくさん飲んでおかないとね。明日もきっと来れると思うんだけど、約束はできないしね」
 来るつもりはあっても、僕はペットである彼とは違って仕事をしなければいけないし、結構忙しかったりするんだ。
 跳ねる身体を抑え付けて水を流す。足はバタバタと動き回り、折り曲げられた膝が僕の背中を直撃して痛かった。足癖が悪いのはペットとしていかがなものだろうか。今度、きちんと躾をしなおさなければならないかもしれない。
 彼の瞳から溢れるそれは涙だろうか。今飲んでいるミネラルウォーターが流れれば面白いのに、身体の仕組みを考えればあり得ないだろう。
 鼻から水が溢れているせいか呼吸がうまくできていないようだ。喉は激しく痙攣し、抵抗は弱々しいものの一層激しくなる――ところで、ペットボトルの水はなくなった。
「はい、おしまい。ごちそーさまだよ」
 そう言って僕は彼の上から退いた。すると彼は身体を横向きにし、身体をくの字に曲げて大きく咳き込む。何度も身体を大きくくねらせて、咳き込む度に口から水が溢れた。折角飲ませたのに吐き出すなんて、一体彼はどれだけ僕に逆らいたいんだろうか。
 彼の咳が落ち着くのをぼんやりと眺めながら、濡れてく床を眺める。この部屋は彼を飼うためだけに借りたもので、糞尿をはじめとした彼の体液で汚れる事は覚悟の上だったが、なるべく清潔に保ちたい。後で彼に掃除をさせなければいけなかった。
 およそ、十分程だろうか。ようやく咳は落ち着いたようだったが、まだ涙を流しているし、肩で荒く息をしていた。
「ご飯は自分で食べる?どうする?」
 彼が激しく動き回って咳き込んだせいで、弁当にも吐き出した水が少しかかってしまっている。僕はその弁当をちらりと見ながら問うと、彼もその弁当に視線を遣ってから、瞼を伏せがちに小さな声で「……自分で」と答えた。
 彼に弁当を与えている間、僕は着ていた服を洗濯機にかける事にする。汚れた彼の身体の上に跨ったせいで僕の服まで汚れたせいだ。洗濯機は玄関入ってすぐの場所にある。彼から長い時間目を離すのは気が引けたので、汚れたデニムとシャツを、下着は汚れていなかったけれどついでに手早く脱いで放り込み、適当にスイッチを押して洗剤を投げ込んで洗濯機を始動させてから彼の元へ戻る。その間およそ一分程だろうか。
 彼の元へ戻ると、彼は膝と肩を床について身体を支え、水で濡れた弁当に頭を突っ込んで、まるで動物のようにして食べている最中だった。後ろ手に拘束している状態ではそれしか食べる方法がない。そんな当たり前な事に、何も考えていなかった僕は今更ながら気が付いた。
 買ってきた弁当は幕の内弁当だ。舌を上手く使っておかずを取って口に含み、咀嚼して嚥下する。何度も口から出される赤く艶めかしい舌と、コンビニ弁当特有の油に濡れる唇はやけに妖しく、まるで僕を誘っているようだ。
 僕が彼の後ろに回り込もうとすると、彼は僕を怯えたように見上げた。結構長く一緒にいると言うのに、彼は僕の事を怖がっている節がある。そんな怖がられるような事はした覚えがないし、いつも可愛がっているつもりなのだけれどペットである彼には愛情がきちんと伝わっていないのかもしれない。人間とペットでは、愛情の表現方法が違う事も多いときくし、きっと僕たちもそうなのだろう。という事は人間である僕から見るとただ怖がっているようにも見える彼の反応や、反抗期とも思える言動は、もしかしたら彼なりの愛情表現なのかもしれない。
「怖い事は何もしないし、そのまま食べてていいよ」
 そう言って、僕は彼の後ろに回り込んで座り込む。持ち上げられた尻は、恥ずかしい場所が全て丸出しになっていて、昨夜垂れ流した汚物が乾いてこびりついていた。
「なに、するんだよ……?」
 彼は僕の行動が気になるのか、首を捻じ曲げて僕の方を窺おうとするが肩を床についている姿勢ではそれもうまくできないだろう。
「何もしないよ、後ろ慣らすだけだから君はご飯食べてていいよ。きちんと食べないと後で僕がまた無理矢理突っ込んであげなくちゃいけなくなるよ」
 僕の希望としては彼の全ての食事をそうしたい。僕の手で彼に栄養を与え、彼を生かしてみたい。けれど、彼はそれをすると酷く怒って抵抗するのだから、僕の手で与えるのは最後の選択肢だ。
 彼はまだ何かを言おうとしたが、僕が両手で彼の尻たぶを掴み、左右に大きく割り開いたところで観念したのか再び弁当に口をつけはじめた。
 彼の汚れた後孔は香ばしい匂いに溢れている。それを嗅ぐだけで身体中の血が煮えたぎるかのように興奮する。僕はその後孔に口付けを落とす。
「んっ……」
 すると彼は短く啼いて、いやいや、とするように尻を左右に振った。
「いいから大人しくご飯を食べなさい」
「でも」
 僕がそう言っているのに、彼はまだ文句があるようだ。ペットである彼はやっぱり可愛いし、彼の願いで僕に出来る範囲の事は叶えてあげたいと思う。けど、基本的にはペットなのだから拒否権はない。その辺りを彼はまだ理解していないようだ。
 僕はわざとらしいため息をついて、僕は彼へ語りかける。
「君が今すべき事は目の前にあるご飯を食べる事だよ。全部食べきるまで他の事は何もしなくていいし、僕が何をしていても気にしなくていいんだよ。今はとにかくその弁当を全部食べ切りなさい。残したら後で無理矢理にでも食べさせるからね」
 ほんの少し厳しい口調で鋭く言うと、彼はようやく理解したのか何も言わず姿勢を元に戻した。
 僕は再び、彼のその魅惑的な孔へと口付けをする。ちゅ、と音を立てると、入り口はひくひくと蠢いて締まった。
 彼は反抗期ではあるが、性欲には従順だ。従順になるまでは長いが、一度快楽の海に溺れてしまえば、普段の生意気が嘘のように甘い喘ぎ声をあげる。
 その孔に舌を伸ばした。瞬間、彼の身体が跳ねる。また何か言うかと思ったが、彼は大人しく弁当を食べていた。時折むしゃむしゃと咀嚼する音が聞こえてくる。
 汚れた孔は少し苦味がある。けれど、汗と糞尿が入り混じったその味は極上の甘さを持っているのだ。これを味わえば誰でも彼の虜になってしまうのではないだろうか。
 だから僕は、彼を誰の目にも触れさせたくない。もしも間違いがあっては、僕も傷付くし、それに何より彼を傷付けてしまう未来が待っているに違いないからだ。
 彼は僕だけのもので、これから死ぬまで一生をここで飼い続けると決めている。
 孔に舌を捩じ込むと、彼の背が小刻みに震えた。息を詰めた気配がし、食事が止まる。食事に集中しろと言ったのにやはり彼はペットとしての自覚がたりないようだ。
「ふっ……」
 挿しこんだ舌で中に唾液を塗り込めるようにする。
 彼が食事を食べないのなら、それはそれでいい。後で僕が食べさせてやれば いいだけの事で、そちらの方が僕としても楽しいのだから。
 尻たぶを両手で極限まで割開き、舌を奥の奥まで捩じ込む。彼の味で、僕の脳が痺れていく。甘い麻薬のようなそれは、本当に中毒になってしまいそうなくらいだ。
 舌を伝わせて唾液を流し込む。上手く孔に入り込まなかった唾液は彼の内腿を伝って流れていった。なんとも扇情的な光景だ。彼の存在そのものが僕の熱を煽っていく。だからきっと、彼と僕とは運命なのだ。
 神様は、きっと僕のために彼を生み出してくれたに違いない。そして、彼と出会えた事が僕の生きる意味だ。僕には彼が必要不可欠だし、彼にも僕が必要不可欠だ。
 彼の内壁を舌で擦る度、彼の萎えたペニスがひくひくと震えている。飼い始めた当初は硬かった孔は、今ではすっかり緩くなってしまっていた。
 舌を引き抜き、今度は僕自身の指を舐めて濡らし、今度はその指を挿し入れた。彼は弁当の横に突っ伏している。尻を高く掲げたそのポーズの、反り返った腰が酷く愛らしい。
 ぐるり、と内壁を広げるように指を回してから、彼が喜ぶ場所に指を押し当てる。
「ひっ――」
 捉えたその場所を、指に徐々に力を入れて押し込んでいく。息を詰めた彼の腰が小刻みに震え、ぎゅう、と僕の指を締め付ける。そして萎えていた彼のペニスが反応を始めた。指先を鉤状に曲げたまま力を抜いても、彼は激しく内壁を蠕動させ、僕の指を善い場所に押し当てるのだから本当に淫乱だ。
 口では何と言っていようと、気持ちの良い事が大好きなようだ。
 入り口がひくひくと開閉を繰り返し僕の指を締め付ける。僕の指に内壁のしこりが触れる度、彼のペニスからぽたぽたと先走りの液体が漏れだした。
「僕の指をおもちゃにして一人で遊ぶのは楽しい?」
 わざと、そんな意地悪な言葉を投げかける。そうすると負けず嫌いな彼はとてもいい反応を見せるからだ。
「うぅ……」
 後ろからで見えないが、恐らく彼は下唇を噛み締めて屈辱に耐えているのだろう。後ろから弄るには孔の反応が逐一見られて楽しいが、彼の顔を見られないというデメリットがある。――次からは鏡を用意するのもいいかもしれない。
 二本目の指を挿入し、孔を広げて中を見る。艶やかに濡れて赤く充血したそこはひくひくと蠢き、僕を誘っている。
 そしてまた彼の好きな場所を、二本の指で交互にタップするように叩いた。
「ひぁっ……それ、やだぁぁっ……」
 彼は掠れた声で絶叫する。力いっぱい押し込むと腰が揺れて全身に力がこもり――抜けていく。射精こそしていないが、それは絶頂を迎えた時の反応だ。彼が絶頂を迎えているのをわかっていながら、僕は愛撫をやめなかった。フローリングに頬を擦りつけた彼は息も絶え絶えに言葉にならない声をあげている。
「あぁ……やぁっ……」
 善いところをひたすら嬲られる愉悦に浸る気持ち良さそうな声は直接僕の腰に響いてくるかのようだった。そろそろいい頃合いかもしれない。
「お尻で気持ちよくなれるなんて、すっかり淫乱になっちゃったね」
 僕が言うと彼は必死に首を振る。どうやら自分が淫乱だという事を認めたくないらしい。
「淫乱じゃないんだ?なんで気持ちいいよね?それとも気持ちよくない?」
 それでも、彼は首を振った。全身を汗に塗れさせて腰を揺らし、甘い嬌声をあげながらでは説得力なんてまるでない。そういう意地っ張りなところも彼の可愛いところではあるが、僕は素直な彼の方が好きだった。
「そっか気持ちよくないんだ。そうだね。おちんちん勃起してるけど射精してないもんね」
 僕は彼の中から指を引き抜いた。彼が気持ちよくないと言うのなら、彼に合わせてあげるのも飼い主の務めだ。自分の言動に責任が持てるペットに育て上げなければいけない。
「気持ちよくないのに相手してもらってごめんね。もう少しで終わりだから、ちょっとだけ我慢してね」
 僕は彼の身体を無理矢理ひっくり返して仰向けにし、彼の足を肩に担いだ。ずっと喘ぎ続けて口が閉じられなかったせいか、口の周りが唾液で汚れている。
「いや……だ」
 彼はこの記に及んでそんな事を言う。けれど、今更止めてやる事なんてできない。さんざん彼の艶やかな姿を見せつけられて、これ以上我慢する事はできそうにない。
「ダメだよ。君に拒否権なんてないんだから」
 ペニスをあてがうと、孔は求めるかのように蠢いた。彼は眉間に皺を寄せ小さく呟く。
「ちくしょ……」
 その顔がまた色っぽい事にきっと気付いていないのだろう。
 熱い彼の体内に侵入する。何事にも代え難い達成感が僕の身体に湧き上がる。彼の体内は程良く解れていて、そして程良く僕を締め付ける。まるで天国のように気持ちいいその場所は僕のお気に入りの場所だ。
 僕が動かなくても内壁は蠢き、精液を絞ろうとしているかのようだ。やはり、彼は淫乱に違いない。いくら抵抗してみせて生意気なフリをしてみても、本心では僕の事が好きに違いないはずだ。
 僕は彼の腰を持ち、ゆっくりと動き出す。最近、きちんとご飯を食べないせいですっかり痩せてしまっていた。多少無理矢理でも食べさせなければいけない。
「ひっ……」
 狭い内壁の中を割開くと、彼は甲高い悲鳴をあげた。
 彼の好きな場所を張り出たカリで抑えこむようにすると、彼の腹筋が艶めかしくくねる。
「気持ち良く、ない?」
 僕が訊ねると、彼は浅い呼吸を繰り返しながら首を左右に振る。素直になれないのなら仕方がない。
「ひぁぁぅ……」
 腰を引き
「あっ……」
 突くと悶える場所を目掛けてペニスを突き込む。彼のペニスに手をやり、その根本に指をまわして押さえつけた。
「君の中、気持ちいいよ」
 囁いて、彼の好きな場所だけを抉りこむ。塗り込めた僕の唾液と僕の先端から出る先走り液のせいで、結合部からぐちゅぐちゅと濡れた音が溢れる。
「ひっ……やめっ……んあっ……手はなして……!」
 内壁を抉る度、彼のペニスがびくびくと震えた。このまま手を離して何回か擦ってやれば彼は絶頂を迎えるのだろう。
 でも、今はそうしてあげない。
「気持良くないのに付き合ってもらってるし、今日はいつもよりはやく終わらせちゃおうか」
 僕はそれを合図に、腰を滅茶苦茶に打ち付ける。彼の事なんて何も考えず、自分の快楽だけを追うために、奥の奥まで力の限り打ち付ける。これで彼が怪我をしてしまったとしてもそれは彼の自業自得に過ぎない。
「痛っ――!」
 予想通り、それは苦痛を伴ったようだ。けれど手は自分の身体の下で拘束されているし、足は僕に抱え上げられているしで碌な抵抗もできず、ただ歯を食いしばり全身を強張らせて耐えるしかない。
「痛い?ごめんね?すぐ終わるからね?」
 わざとらしく言いながら腰を振る。今まで届いた事のない奥まで届けとばかりに、彼の身体を割開く。僕が腰を振るたび、結合部からパンパンと肌がぶつかる乾いた音が響いた。
「苦しっ……」
 苦しい、と訴える声は本当に苦しそうだ。見ていて憐れになる程だ。
 僕はふと、彼の言葉を思い出す。腰を止めて彼の顔を捕まえて僕の方を向かせる。視線を逸らされたから目が合う事はないけれど、僕の方からは彼の瞳の表情を窺う事ができる。
「そう言えば死にたいんだっけ?このまま殺してあげようか?」
 彼の身体がぴくりと震えた気がする。けれど、はいともいいえとも、返答はない。
 返答がないのは、そうして欲しいという合図だろうか。
 僕は彼の首に両手を回し、指に力をこめる。
「いいよ。僕が君を殺してあげる」
 彼の首に僕の指が食い込んでいく。
「うぐぅっ……」
 器官を圧迫し、彼の呼吸を妨げる。
 抵抗をしなかった彼だが、それは一分も持たなかった。天を仰いで口を開き、空気を求めるように胸を上下させるが、それは叶わない夢だ。足をばたつかせるから、僕は頭を蹴られてしまった。
 そして、それと同時に僕を咥え込んだ後孔がぎゅうっと締まる。
「気持ちいいよ」
 僕は微笑んで、彼の首を締める手を緩めた。途端、空気を吸う事のできた彼は暴れる事もやめて必死に深呼吸を繰り返す。僕はその間にも何度か彼の体内を突き上げる。先程までのような激しいものではなく、今度は彼の好きな場所を捏ね上げるものだ。
「はっ……はっ……はっ……」
 呼吸を繰り返す彼の喉を再び締め上げる。苦悶に目を見開いた彼は身を捩り再び暴れだす。後孔も再びきつく締まり、僕にこの上のない快感をもたらした。
「君の身体は気持ちいいね。それなのに殺しちゃうなんて勿体無いよ?」
 締まる後孔を割開き、突くとよがる前立腺を掘削するかのように抉り込む。苦しいと暴れる彼のペニスは萎える事なく天を突いていた。
 彼の喉が痙攣して、僕は手を緩める。咳き込んだ彼には構わず快楽を追うと、彼は悲鳴をあげた。
 その咳が収まる頃にはまた首を締め、連動してしまる体内を味わう。
 僕は身を屈め、彼が飲み込みきれず口の端から漏れた唾液を啜った。彼の身体は柔らかく、二つ折りにも近い体勢だと言うのになんなく曲がるのだから少し羨ましいし、飼い主である僕は鼻が高い。
 指を緩めて呼吸をさせ、適当なところで締めあげて呼吸を止めさせる。何度も何度も繰り返して、彼に生死の間を味合わせる。
 殺してしまうには惜しい存在だ。――彼が望むのなら、殺す事も厭わないつもりだ。けれど、それは今ではない。いつかそのうち僕の手で殺してしまいたいとは思っているけれど、今はまだ彼と二人の時間を味わっていたい。
「イキそ」
 必死で呼吸をする彼の耳元で囁いて、僕は前立腺目掛けて腰を振る。
 彼とするセックスはいつだって極上だったけれど、今日はまた格別だ。
 性欲だけではなく、僕の心まで満たしていく。
 白目を剥いてぎゅうぎゅうと僕を締め付ける彼の一番深くまで侵入した僕は、そこで己の全てを解放した。
 僕を満たす充足感が彼にも届けばいいと願いながら子種を流し込む。首を締めて強く締め付ける中にする射精は甘く狂おしい程の快感だった。
 何も孕まない腹だけれど、いつか孕めばいいのに。彼の子ならばきっと可愛いはずだ。それに、もしも彼の子が生まれれば、彼の望む通りすぐにでも彼を殺してあげる事だってできるかもしれない。
「うぐっ……」
 そして、彼もまた絶頂を迎えたようだ。首を締められ、ほとんど意識も飛ばしかけながら、そのペニスから白濁の液体を垂れ流す。
「全く、君はどうしようもないね」
 彼の首から手を離し、自身を体内から引き抜いて彼から離れる。
 僕から解放された彼は呼吸を求めて咳き込みすぎ、さっき食べたばかりの弁当を吐きだした。
 せっかく食べたものを吐くなんて普段なら怒るところだったけれど、今日は僕だって無茶をしすぎた自覚はあるしおおめに見る事にしよう。次にする時は順番をもっと考えなければいけない。
 彼が咳き込んでのたうち回る度に金属の手錠がガチャガチャと音を立てて煩かった。彼の呼吸が落ち着くのを待つ間に僕はキッチンへと向かって探しものをする。
 辺りを見回して、それはすぐに見つかった。以前、コンビニに行った時についてきたけれど結局使わなかった使い捨てのスプーンだ。
 それとキッチンのある廊下に放ったらかしにしていた箱の中を見る。箱の中は、所謂大人の玩具が詰め込まれている。もう彼に使った事もあるし、これから使ってみたいものと雑多に混じっている。いつか彼の乳首にピアスも開けてやりたいと思ってニードルを用意している。
 今日はその中から、太ももと足首を片足ずつ戒める事の出来る革製の足枷をとった。足枷は金属製のポールで繋がっていて、両足を戒めると股を閉じる事が出来なくなるという代物だ。
 適当に箱の中に突っ込んでいたせいで他の玩具のコードが絡まり、取り出すのに時間がかかってしまった。そのせいで、僕が彼の元へ戻る頃にはその呼吸は通常通りくらいには落ち着いていた。
「もう大丈夫?」
 そうして僕が話しかけているのに、彼は眉間に皺を寄せた不機嫌そうな表情で僕を睨みつける。
 せっかく優しくしようかと思ったのに、そんな事をされれば僕だって腹が立つ。
「ご飯、続きしようか。自分で食べれなかったみたいだし、今度は僕が食べさせてあげるね」
「いらないって、言ってんじゃん」
 珍しくせっつかずとも喋ってくれたが、今の僕は不機嫌だ。彼の言葉は無視して、部屋の隅で転がる彼の足を手早く戒める。
「やめっ……飯食うだけなのになんでこんな……!」
 君が素直に言う事を聞かないからだよ、とは教えてあげない。こういう事は自分から理解しなければ意味がないはずだ。
 太ももと足首を左右でそれぞれに拘束した。間に通ったポールのせいで彼の秘部は惜しげもなく晒される。僕を咥えこんでいたそこは少し赤くはなっているが怪我はないようだ。
「さぁ、美味しいご飯の時間だよ」
 さっき彼の口から溢れたミネラルウォーターのせいで水浸しになった弁当を左手に持ち、右手にはキッチンで取ってきた使い捨てスプーンを取る。
 許そうと思ったけれど、怒らせた彼が悪い。折角僕が買ってきてあげたというのに吐き出すなんて失礼すぎる話だ。
 彼が咳き込んで吐き出した弁当をスプーンで取り、弁当に戻す。吐き出したそれはまだ時間が経っていなかったために消化できていない。胃液が混じっているのか少し酸っぱい匂いがする。
「おい……」
 彼は、これから自分の身に何が起きるか予想できたようだ。その瞳から怯えが見て取れる。
 怯える彼の姿は、快感に感じて震える姿よりも可愛い。好きな子には意地悪をしたくなってしまう、というのはきっとこういう事なのだろう。
 そして、昨日、彼が一人でひりだしたのであろう大便もスプーンで掬って弁当へと入れる。随分乾いてしまっていたけれど、まだ噛む分には問題がないはずだ。
「や……やだって、そんなの食えないって……」
 彼は首を振り、身を捩るがそんな事で逃げられるはずもない。
 僕は彼の足の間に跪き、最後の仕上げをする。
「ひっ……!」
 彼の後孔へスプーンを突っ込み、さっき出した僕の精子をこそぎ出す。男を受け入れて柔らかくなったそこは、スプーンも簡単に受け入れる。
 スプーンで内壁を擦ると彼は小さく呻き声をあげた。
 粘ついた液体は幾筋か尻穴から床に垂れてしまったけれど、もとより全て取り出せるとは思っていなかったから問題ない。大便の入った弁当の上にふりかけてトッピングする。
「準備できたよ」
 そして僕は彼の顔の横に周った。弁当を床に置き。食べやすいように弁当に入っている白飯と大便を混ぜてスプーンに載せる。ところどころに彼の入ったご飯が混じっていた。
「無……理……」
 顔を振って嫌がる彼の鼻を摘む。抵抗は自分の首を締めるだけというのを、彼は理解できないようだ。可愛いけれど頭の悪いペットだ。そこだけは難点だと思う。
 鼻での呼吸を遮断しても、彼は涙目になりながら口を硬く閉じている。我慢出来るのは一体いつまでだろうか。往生際の悪い子だ。
 どうせ長くは続くまい、と予想した僕の予感はほんの十秒程で的中した。
 彼は薄く唇を開け、その隙間にスプーンを捩じ込む。彼の腹部が痙攣した。嘔吐の前兆だろう。まだ飲み込んでもいないのに仕方のない子だ。
 スプーンを引き抜いても飲み込もうとはしない。まだ抵抗できるとでも思っているのだろうか。
「吐き出したらまた拾って食べさせるから、きちんと全部食べるんだよ」
 彼は目を見開き、目尻からは涙が零れた。
 僕は彼に、大丈夫だよ、と微笑んでみせる。
 そうして、ようやく逃げ場がない事を理解したようだ。彼は瞼を硬く閉じたかと思うと、口に入れたそれを噛まずに飲み込んだ。
 ごくり、と喉が動き、彼は嗚咽を漏らす。
「泣くほど、美味しい?」
 そういうわけではないのだろう。僕としては彼の大便は泣くほど美味しいものなのだけれど、自分や他の人間の大便には興味がないどころか、口にするのもごめんだ。恐らく、それは彼も同じはずだ。でも、躾なんだから仕方ない。
 僕はふた口目をスプーンに取り彼の口元へ遣る。今度は鼻を摘まなくても口を開いた。泣きながら食事をする彼というのは、飼い始めてからはじめて見る光景だった。
 彼はその後も声をあげて泣きながら、弁当を全て食べ終えた。時折吐きそうになっていたようだが、なんとか堪えたようだった。
「よくできました」
 からっぽになった弁当の容器を彼によく見えるようにし、頭を撫でると彼は更に大きな声をあげて泣いた。そんな彼の頭を撫でてやり、スキンシップをはかる。僕は賢い子には優しいのだ。
 彼の涙が引くのを待って、僕は立ち上がる。
「じゃあ、最後に水分補給しとこうか」
 彼の顔面に跨った事で彼は察したのだろう。自分から口を開けて、僕のペニスの先端をくわえた。
「一滴も零さないでね」
 そう言って、僕は尿意を放つ。ジョロジョロと音を立てて彼の喉に僕の尿が流れていく。征服感で胸が踊った。彼の全てはもう、僕のものだ。誰も知らない彼を、僕だけが知っている。
 尿が途切れると、彼は僕のペニスを吸って尿道に残った最後の一滴まで絞りとる。今まで散々躾けた成果は、ここにきてようやく実ってきているようだ。
「いい子だね」
 僕が彼の頭を撫でると、彼は再び涙をこぼし始めた。彼の気持ちはよくわからなかったけれど、ペットにはペットなりの思うところがあるのかもしれない。
 僕は風呂場へ行って温かい湯を浴槽に溜めながら、水に濡らしてかたく絞ったタオルを用意した。
 彼の首にチェーンのついた首輪を通し、チェーンの先端を僕の腕に巻きつけてから、足と手の拘束を取り去った。
「さ、掃除の時間だよ。今日は僕もここに泊まるからさ、汚いところでは寝たくないし」
 用意したタオルを手渡し、チェーンを長めに持った僕は部屋の汚れていない場所へと移動する。
 彼は自由になった腕で目元を拭いながら糞尿や汗、精液で汚れた場所をタオルで拭き始めた。
 彼の反抗期は終わったのだろうか。後始末も出来る立派なペットに育ったなんて、自分の手腕の惚れ惚れしてしまいそうだった。
 掃除を終わった彼を連れて一緒に風呂へ入り、身体を清めてやる。隅から隅まで、彼は僕だけのものだ。
 そのあとは洗濯機にかけていた僕の服を風呂場に干して、綺麗になった部屋で廊下に置いている僕が泊まる時のために置いている毛布に二人でくるまった。ペットには布団や毛布は与えない主義だが、二人で眠る時にはまた別の話だ。心なしか彼も嬉しそうで、幸せだった。
 しばらく眠れなかったようだが、僕がずっと抱きしめて髪を撫でているうちに彼はようやく眠りについた。その頃にはもう朝方になってしまっていたけれど、彼が幸せならそれで構わない。
 大切な彼を抱きしめて、僕も眠りへとつく。今は温かいこの身体も、いつか僕が冷たくしてしまうのだろう。大好きな彼だから、最期の瞬間は僕がこの手で、と決めている。それに、どうせなら若いうちにとも思っている。
 まだまだやりたい事があるからすぐにではないけれど、きっとそう遠くない未来に、彼の最期の瞬間を看取る事になるのだろう。
 彼がいなくなる事を想像すると少し淋しいけれど、問題はない。
 彼がいなくなっても、ペットはまた飼う事ができるのだから。


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おなまえ


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