溺れそうな暗闇で、照らす光は眩しくて。 第十話
「コーキくんはセックス好き? 気持ちいい事好き?」
ベッドのへりに裸で腰かけた遼は、コーキの髪をゆっくりと撫でながら問うた。
事後の気怠い身体を、交換したばかりのシーツに埋めたコーキは少しだけ考えてから静かに頷く。
元々は性に対して淡泊な方だったはずだ。それなのにいつの間にか――遼のペットになってからは毎日が濃く、すっかり夢中になってしまっていた。
好きか嫌いかで問われれば間違いなく好きだと言える。
――それに、セックスをしている間は快感に支配され、煩わしい全てを忘れる事が出来た。
「ふぅん。じゃあもっと気持ち良くなる事、たくさんしてあげる」
いつもよりほんの少しだけ、抑揚に欠ける物言いな気がして、コーキは自らを撫でる遼を仰ぎ見る。けれど、その表情はいつもと変わらない気がして、きっと気のせいだったのだろうと自身を納得させた。
目が合うと遼は「なぁに?」と笑んでみせる。
「……何も、ないです」
遼との生活を初めて一か月と少しが経ったが、遼の考えている事はいまだに読む事が出来ない。
読み辛い、というのではなく、根本の考え方が今までのコーキの周囲の人間たちとは違っていた。だから、どういう思考回路をしているのかがわからなかった。
遼は口元だけでフフフと笑い、目を逸らした。
服を着る事も許されず、コーキは寝室のベッドの上に座っていた。じゃらり、と金属製の重い鎖が首輪に繋がれる。
「まだ昼間なのに、珍しいですね。仕事はいいんですか?」
窓の向こうはまだ明るく、太陽の光が眩しい程に降り注いでいた。
普段、遼は昼間に仕事をしているので行為は夜にばかりしていた。それなのに今日は珍しく昼間に準備をしているものだから、いつもと違う流れにコーキは首を傾げる。
「朝倉くんが手伝ってくれて、少し時間に余裕が出来たからね。今日はキミのために少し特別なコト、してみようかなって」
遼は麻縄を取り出すと、コーキの手を取って身体の前で一纏めにした。コーキは抵抗もせず遼にされるがままに身体を委ねていた。
「はぁ、特別なコト、ですか……?」
遼とのセックスは何か道具を使ったり、今のように拘束をしてみたり、世間一般的にみればアブノーマルだと言って差し支えないだろう。
そういった事を好む遼の言う『特別』が一体何を指すのかわからず、疑問を重ねる。
「うん、特別。コーキくんがこの前セックス好きだって言ってたし、喜んでもらえるかなーって」
遼の言葉に、コーキは再び「はぁ」と曖昧に頷いた。数日前にそんな話をしたような気もするが、具体的にどんな事をされるのか全くわからない。
不安が胸に去来し、憂鬱が覗き込む。
「じゃあ、用意してくるからベッドの上で座って待ってて」
遼は真っ白なシーツを指さした。コーキは促されたようにベッドの上で正座をすると、遼は満足げに頷く。部屋をよく見渡してみれば、掛け布団や時計、こまごまとした私物は全て片付けられていた。
部屋の中にあるのはベッドと、ベッドの上にある枕だけだ。
数えきれない程身体を重ねてきたが、今までにこんな指示は受けた事がなかった。待たなければいけない理由もわからず、コーキは眉を寄せる。
「今までより気持ち良くしてあげるから、そんな不安そうな顔しないで」
コーキの反応を敏感に察知した遼は、少し赤いコーキの髪をくしゃりと撫でた。
柔和そうで優しい笑みがコーキの瞳に飛び込む。けれど、それは上辺だけで実際の遼の内面がどうなっているのか――。
コーキにはわからなかった。少なくとも、その見た目の優しさを備えていない事だけはなんとなく理解した。
「……はい、期待してます」
不安を押し殺し、返事をする。
どうせなくなってもいいと思っていた命だ。守るべきものを失って、自分自身を失った。今更不安に思うような事は何もないはずだ。
「今日、イイコに出来たらご褒美あげるから」
「頑張ります」
そう言い残して、遼は寝室をあとにした。
一人きりで寝室に取り残される事は初めてだ。己の鼓動がどくどくと刻まれている事を自覚する。不安なのか期待なのかよくわからずに落ち着かない。
それからどれくらいの時間が経っただろうか。時計のない部屋に拘束されたコーキには時間を確かめる術はなかった。
ガチャリとドアノブが回され、はっと顔をあげる。
「遼さ……」
遼さんおかえりなさい、という言葉を最後まで紡げなかったのは、遼の後に続く人間たちのせいだ。
ドアを開け、寝室へと帰ってきた遼の後に続いて二人の男がコーキの視界に入る。
「え……」
驚きで言葉を失ったまま身体を硬直させた。
男たちは二人とも遼と同じ年の頃だろうか。二人ともジーンズにシャツというラフないでたちだ。
男の顔がやけにニヤつき、コーキに視線を浴びせてくる。疑問に思ったその直後、自分が何も纏っていない全裸だという事に気付いた。
慌てて局部を隠そうとするが、その腕を遼に抑えられる。
「コーキくん、ご挨拶してみせて」
遼はそれがさも当たり前のような顔をして言った。
反射的に腕を引いて遼から逃れようとするが、いつになく強く抑えられていたため、逃げる事も出来なかった。
「ご、ご挨拶って……」
遼と二人の男たちを交互に睨みつける。
ここまで来れば、遼が何を望んでいるのかは大体わかる。
「僕のペット、自慢しようと思ってつれてきたんだよ。それにキミがセックス好きって言ったし、いろんな人とセックスできるの嬉しくない?」
遼の言っている事の意味がわからず、背中を冷や汗が伝った。――いや、言っている事はわかるのだが、どういう発想をすればそんな結論に至ったのかが理解できなかった。
「お、れ……そういうのは、あんまり……」
元々、男同士のセックスに興味があったわけではない。
遼に身体を許したのはほんの気まぐれで、セックスが好きと言ったのは遼のセックスという意味だった。
そもそもセックスは複数人でするものではない、思っている。
「いいから、挨拶」
普段はコーキの不安や悲しみを敏感に察知する癖に、こういう時は容赦なく踏みにじってくるのだからタチが悪い。
コーキの腕をぐいと引っ張って膝立ちにさせる。
両腕を一纏めに拘束されているせいで、腕を引っ張られていては局部を隠す事も出来ない。二人の男に萎えたペニスが晒された。
「でも」
「ごめんね、こういうの初めてでさ。好きに使ってくれていいから、今日は楽しんでいってよ」
コーキの言葉を遮った遼は、二人の男に向けてそう言った。
「好きに使って、って……!?」
疑問をぶつけようとしたコーキの首に嵌められた首輪に繋がる鎖をぐいと引っ張る。それによって首が締まり、コーキはベッドの上に倒れた。
遼はベッドの上部に繋がった鎖の長さを、起き上がれない程まで短く調整する。
何も言わず無言で作業をする遼が怖くて、縋るようにそちらを仰ぎ見た。
「遼さん……!俺こういうの……」
今更、どうなってもいいとは思っていた。それなのにまだ『イヤだ』と思う感情がある事が不思議だった。
「君に拒否権はないって、何回教えればいい?」
ベッドの上に仰向けになったコーキを冷たく一瞥すると、遼はコーキの頭の横に腰を落とした。
その声は冷たく、既に機嫌を損ねてしまっている声だ。
恐怖に脅え深呼吸を繰り返す。
何もかも捨てていいと願い、望み、遼についてきた。
死んでもいいと思っていたのだから、複数の男たちに向かって身体を開く事くらい何の問題もないはずだ。
おう言い聞かせ、唇を噛む。
いずれにしろもう抵抗は出来ないのだから、コーキに残された道は受け入れるしかない。
「遠慮せず、どうぞ」
遼が男たちに微笑むと、男たちは楽しげにベッドの上に登った。
「ひっ……!」
ローションに塗れた知らない男の指先が後孔へ侵入する。内壁を乱暴に掻き回されて引き攣れるような痛みが走った。
縛められた腕は頭上で固定され下ろす事が出来ない。両足を大きく開いて折り畳まれ、その上から男に体重をかけられているので身動きもとれない。尻の下にはクッションが敷かれており、見せたくない大事な場所は全て晒されてしまっていた。
遼の手はコーキのペニスをゆるゆると扱いている。
「緊張してる? 勃たないねぇ」
遼の言う通り、コーキのペニスは萎えて縮こまったままだ。遼が何度扱こうと、いくら内壁の感じる場所を狙って撹拌されようとぴくりともしない。
それは恐らく精神的な問題なのだろう。自らの意思に反して行われる性行為に、少なからずの嫌悪感が先立ってしまっているせいだ。
「んー……仕方ないなぁ」
独り言のように呟いてコーキのペニスから手を離すと、どこからともなくアイマスクを取り出す。そのアイマスクがコーキの目を覆った。
「っ……」
いやだ、と身を捩ろうとしても、腕を拘束され下肢を男たちに抑え込まれた状態ではろくな抵抗も出来ない。
耳元でカチャカチャと何かを準備しているような音が聞こえた。視界を塞がれ、遼が何をしているのかわからず不安だけが湧き上がる。
不意に腕を抑えつけられ、コーキは身を強張らせた。
「コーキくん、身体の力抜いてラクにして」
前腕の内側に何か冷たさを感じる。何度か往復したかと思えばその冷たさは離れ、けれど息をつく間もなく再び遼の手を感じた。
「怪我しちゃうから、絶対に動かないでね」
「ひぅ……!」
先ほど冷たさを感じた場所にちくりと痛みが走る。
冷たさは消毒で、痛みは注射の針だと気付いた時には全てが終わっていた。
「遼さんっ……!? あんた、俺に何打ったんですか!?」
言葉遣いが乱れてしまったのも無理はないだろう。拘束された腕がなんとか解けないかと、頭上で固定された腕を引き寄せようとしてみるが、縛られた手首が痛むだけだった。
「そんなに心配しなくても大丈夫。気持ち良くなれるお薬だよ」
それが違法なものである事は容易に想像出来る。不安を通り越した苛立ちに突き動かされ、抑えつけられた下肢をバタつかせた。
男たちは油断していたのか力に負け、足は簡単に解放される。勢いで男を蹴ったその瞬間、コーキの頬に乾いた音共に衝撃が走った。
「っ……!」
「お客様になんて事してるの? キミは本当に不出来なペットだね」
遅れてやってきた痛みと共に冷たく言い放たれる。平手打ちをくらったのだと理解した。
望まぬ事を強要され不出来だと罵られる現状に堪えようのない理不尽さを感じる。けれど、それを――ペットという立場を選んだのはコーキ自身だ。
歯を食い縛りその怒りを無理矢理抑え込む。抑え込むというよりもぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に投げ込んだ、という方が近い。
「……すみませんでした」
本心の伴わない謝罪の言葉を口にし、自ら足を開く。すかさず足を抑えたのは先ほど蹴り飛ばした男だろうか。
遼のものらしき指にまだ痛みの尾を引く頬を撫でられ安堵する。
「初めからそうして素直になってればいいのに」
素直の定義について問い詰めたくなる気分を無視し黙り込む。
先ほど打たれた薬の効果だろうか。身体が火照ってきたような気がして軽く息を吐いた。
男たちの手が内腿や足裏、腹筋を撫でまわす。性感にはまだ少し遠いくすぐったさに襲われ、不自由な身体を捩った。
どこを触られるのか読む事が出来ず、唇を噛み締めてその刺激に耐える。
遼はコーキの耳元へ唇を近付け、髪を撫でて耳に舌を這わす。
「ぁ……」
ぞくり、と電流のような何かが背筋を駆け抜けた。
「コーキくん、かわいい」
囁かれたその吐息が敏感な耳にかかる。
暗闇にいるコーキを、今まで何度も聞いて覚えた遼の声だけが照らす。
「キミを気持ち良くするために二人を呼んだんだよ? それに僕もいるんだし、何も怖くないよ。キミがその気にさえなれば今までで一番気持ち良くなれるはずだよ」
言葉の合間にも耳に何度もキスを落とし、優しく囁いた。その間にも三人の男の手が身体中を撫でまわし、コーキはびくびくと身を震わせた。
「でも……」
けれど、抵抗感は拭えない。
そう反論しようとした唇をキスで塞がれる。
侵入した舌に上顎を擦られ、背が僅かに反った。そうする事で胸を突き出し強調したようになってしまった乳首を、誰かの指に弾かれる。
「ん……」
じん、と痺れるような刺激に漏れた声は遼の唇に吸い込まれてしまった。
互いの唾液が混じり濡れた音を立てる。舌を啜るようにしゃぶられて遼と自分との境がわからなくなってしまうような錯覚を覚えた。
あちこちに誰かの指先を感じながらするキスは酷く背徳的で、嫌悪感はまだあるというのにコーキの中で熱い何かが蟠り始める。
後孔に誰かの指が侵入し、キスをしながら体内を広げられる感覚に吐息が漏れた。
流し込まれた唾液を飲み下し、唇が離れた。
「遼、さん……」
身動きも取れず視界を塞がれた状態で、目の前にいるはず男の名を呼ぶ。
嫌悪と不安は、徐々に諦めと虚無へと変わりつつあった。
「気持ち良くなりたいよね?」
再び耳に息を吹きかけながら囁かれ、萎えていたはずのペニスがどくんと脈打つ。
「……はい」
一度諦めてしまえば不思議なもので、今までは身を隠していた肉欲がどんどん顔を出す。
後孔に差し込まれた指を締め付けて内腿が震えた。あっという間にペニスは立ち上がり更なる刺激を求める。
けれど、そこにコーキの意思はなかった。全てを諦めて己の意思を封印し、与えられる刺激に身体を任せる。何故か嫌だとは思わなかった。
「っ……!」
二本目の指が挿入され、後孔をぐいと広げる。いつもより太く肉厚のあるその指は初対面の二人の男のうちのどちらかのものなのだろう。
視界を塞がれている事で、肌を撫でる手たちが全て遼のもののように思える。そんなはずはないとわかっているのに――見知らぬ男たちに弄られて勃起させているのだと思うと酷く乱れた気分になった。
続けざまに前立腺を擦られ、焼け焦げてしまうような快感に息を詰める。
「コーキくん、声我慢しないで」
そう言われると共に口内に指が差し込まれた。そちらの手は遼のものだという事がわかる。
アイマスクをしているはずなのに、視界が白く開けた。横になった身体が宙に浮いているかのような錯覚、身体の隅々まで神経が研ぎ澄まされていくような気がした。
撃たれた薬が効いているのだと理解する。
「あぁぁ、んっ……、そこぉ……」
後孔を広げるように指が粘膜を広げた。快感に直結しているわけではないのに、他人に排泄孔を広げられるというその背徳的なシチュエーションに興奮してしまう。
勃起したペニスを触って欲しくて、遼の指を性器に見立ててしゃぶる。じゅるじゅると音を立て、執拗に舌を絡めてすいあげる。遼の手にコーキの唾液が伝った。
「そこが、何? ちゃんと言わないとわかんないよ」
遼はコーキの唇から指を引き抜き、唾液のおかげで滑りの良い指で乳首を捉える。
いつの間にかぷっくりと膨れたそれをそっと撫で上げると、コーキは頭を振り乱して刺激に耐えた。
そこを触られるのも確かに気持ち良かったが、今はそこよりも性器を触って欲しくてたまらなかった。燻った熱を放出したくて仕方なかった。
「う、ぁ……ペニス、触って……!」
不自由な姿勢げ腰を振ると、勃起したペニスが淫らに揺れた。
だが、遼は眉を顰め不機嫌を露わにする。
「そんな言い方は教えてないよね?」
――コーキからは表情こそ見えていなかったがその声色で表情を読み取る事が出来た。
遼の指はお仕置きだといわんばかりにコーキの乳首を捻りあげる。
「ひぁっ……!」
弱いその場所に鋭い痛みが駆け抜け悲鳴をあげた。
遼と出会ってから弄られるようになった乳首は日毎敏感さを増している。男なのにそこで感じるようになってしまう事について羞恥と喪失感があった。
「触って欲しい場所があるなら、ちゃんとペットらしくおねだりしなさい」
痛みの余韻に震えるコーキに、飼い主の声で遼は言う。
首輪に繋がれた鎖がじゃらりと音を立ててコーキの思考を支配する。火をつけられた肉欲を発散する事しか考えられなかった。
「お……ちんちん、触ってください……」
これまでの人生で築きあげた理性やプライドを捨て、腰をくねらせながら愛撫を求めた。
「いいよ、触ってあげる」
「ああああっ……!」
手のひらにペニスが包まれたその瞬間、雷に打たれたような衝撃が走る。
薬のせいなのか、普段感じるよりも数倍の愉悦がそこから溢れ出した。挿入された指を強く締め付け、内壁に感じるその指にさえ興奮を覚えてしまう。
それと同時に二つの乳首を弾かれ、どうしようもない熱さが脳髄へと流れ込む。
ベッドから身体が浮く程に背を反らせ、無意識のうちに全身が強張った。
「ひ、あ、気持ちイ……!」
根元から先端まで、リズムをつけて扱かれその愉悦に甘く悲鳴のような声を漏らす。
それと同時に前立腺を揉まれ、乳首を弾かれる。そのどれもが絶頂よりも深い快楽を伴っていた。
脳に流し込まれるような愉悦に、口を閉じる間もなく喘ぎ続ける。
「ああ、もしかして薬効いてきた?」
遼はどこか嬉しそうな声色で言うと、コーキの視界を覆うアイマスクを外した。
「んんっ……!ぁ、イイ……!」
暗闇に光が戻る。
男たちに嫌悪を感じる余裕は既になかった。
「お客さんにきちんとご奉仕できる? ちゃんと出来たら、その分コーキくんにも返してあげるから」
囁くように言われ、必死で頷いた。先ほどまで感じていた嫌悪も怒りもどこかへ消え、今は湧き上がる肉欲を解消する事しか考えられない。
遼は腕は拘束したまま固定だけを解いた。後孔に差し込まれていた指は一旦抜かれ、遼に促されるまま体勢を変える。
膝を立ててうつ伏せになり、尻だけを高く掲げた状態で見知らぬ男の股間に顔を埋める。勃起したそれは遼のそれよりも色が濃くグロテスクに見えた。躊躇はほんの一瞬で、それを口に含む。
同時に後孔に熱いモノを感じた。
「ああっ……」
遼以外の男根を初めて受け入れる。慣れた遼の感触とは違うモノに内壁を擦られ腰が震えた。
口に咥えた男根を喉奥まで含み、貫かれているかのような錯覚に溺れてしまいそうだ。
腰を掴まれ、前立腺を抉るように内壁を擦られて快楽に思考を奪われる。舌を使って口内の男根に愛撫を施そうとするが、後孔を抉られる度にその動きは止まってしまう。
業を煮やしたのか、男はコーキの髪を掴み強引にコーキの頭を上下させた。
吐き気を催す程の奥まで突っ込まれ、口を性器のように扱われる。けれど、それさえも今は快感へと感じられる。男に征服されているのだという被虐的な高揚感があった。
後孔を蹂躙する肉棒が奥まで入り込む度に身を焦がす快楽がかけのぼる。一気に絶頂の高みへと連れて行かれ、コーキのペニスから白濁の液体が放出された。
「んんっ、ひぁぅ……!」
だが、絶頂を感じているその瞬間にも上下から突っ込まれた肉棒は動きを止める事はない。身体に刻まれる度を越えた快楽に目の前がチカチカと明滅し頭の中が酷く熱くなる。
崩れそうになる腰を無理矢理支えられ、柔らかな粘膜を苛められる。その柔肉は更なる快楽を貪りたいと男の肉棒に絡んでは搾乳するかのよう蠕動した。
喉を突くペニスのせいで涙に鼻水まで溢れ、呼吸もままならない苦しさの中、全てが快楽へと置き換わる。
後孔に受け入れたペニスがより一層奥まで入り込んだかと思えば、体内に溢れ出す液体を感じた。中に出されたのだ、と思うよりも先につられて二度目の絶頂を迎える。
ぼたぼたとシーツに精液を振りまきながら上下の肉棒が引き抜かれ息を詰めた。
男たちは互いの位置を入れ替え、今まで口に咥えていた方の男根を後孔に受け入れる。
「っ……!」
先ほどまで内壁を捏ねていたものよりもカリの部分が張り出したそれは、コーキの一番感じる場所を強く擦りあげていく。
ごりごりと音が聞こえそうなくらいに前立腺を抉られ、体内から溢れるような愉悦が身体に満ちていく。身体を満たした甘い液体は全身を痺れさせる毒だ。一度知ればあっという間に溺れて沈み、這い上がれなくなる。
目の前に突き出された、ローションと白濁に塗れ萎えたそれに縋るように舌を這わす。口内に独特の青臭さが広がったが、それさえも被虐心を刺激し愉悦が増幅する。
「コーキくん、気持ちイイ?」
今まで見ていただけの遼はコーキににじり寄ると、弧を描く背中を爪の先で撫でた。ぞくぞくと快感が背に走り全身を震わせて後孔を締め付ける。
「ぁっ、気持ちイイ……! んふぁっ……!」
溺れてしまった快感は身体に纏わりついて逃げる事は出来ない。
二人目の男はコーキの前立腺に浴びせるように精をぶちまけ、男根を引き抜いた。身体を制御する事は不可能でどうしようもない絶頂の極みを漂う。
「コーキくんのナカ、二人分の精液ですごくえっちになってる」
遼はくっぱりと開いたコーキの後孔に指をひっかけ、体内を覗き込むようにした。
「やめっ……! 言わないでっ……!」
羞恥のせいかきゅうきゅうと収縮する後孔から、流し込まれた精液が滲みだす。すると遼は仕置きだと言わんばかりに親指を押し込んだ。
「んぁぁぁ」
そのまま撹拌するように指を回して内壁を広げられ、小さな絶頂が体内で弾ける。
「ご褒美あげる。もっと気持ち良くしてあげるから仰向けになって」
遼の指を含んだまま仰向けになる。とは言ってもコーキが自ら身体を動かしたのではなく、力なくうつ伏せに崩れた身体を男たちにひっくり返された、という方が正しいだろう。
なすがままに身を任せ、蛙のように足を折りたたんで膝を大きく開ける。親指が引き抜かれ入れ替わりに遼のモノが体内へと侵入する。
「あっ……! 遼さんっ、堪んないっ……!」
見知った愉悦が身体を覆う。遼は先端で感じる場所だけを突き上げた。
「ひぃっ、それ、怖いっ……」
小刻みに前立腺ばかりを突かれ背を反らせると、突き出した胸の突起を二人の男がまさぐり始める。赤く充血し勃起した乳首を捏ねて引っ張り、爪を立ててつまんでは弾く。
「だ、めっ……千切れちゃうからぁ……」
強く引っ張られると痛みが勝り、乳首が引きちぎれてしまうような気がした。けれど、痛いだけではなく腰に直結する快楽もあった。
「そうだね、こんなに感じる乳首が千切れちゃったらコーキくん困るもんね」
遼はそんな事を言いながらコーキに腰を打ちつける。白濁のせいかいつもより滑りがよく、濡れた音が耳に残った。
「ん、ぁ……もっとぉ……」
腰をうねらせ、ペニスを揺らして快楽を強請る。
もう何度も絶頂を迎えて辛いはずなのに、薬の効果のせいなのか肉欲はとどまるところを知らない。
「いいよ、キミが望むだけ気持ち良くしてあげる」
遼はそう言って何かを取り出した。手のひらより少し大きい筒状のそれは、所謂オナホールと呼ばれるものだ。
内部にローションを絞り込み、コーキのペニスへとあてがう。
「ぁぁぁぁっ……!」
柔らかいシリコンにペニスを包まれ、直接的な快感に思考が灼ける。無意識に後孔を強く締め付け遼の男根を隅々まで味わった。
力の入った後孔を割り開くように抜き挿しされ、乳首は二人の男に嬲られている。ペニスはオナホールで絶えず扱かれ、快楽に全てを奪われる。
この毒沼の快楽を味わうために生まれてきたのではないかとさえ錯覚する。
腰を震わせてオナホールの中へびゅるびゅると白濁を放出した。だが、男たちの遊びが終わる事はない。
「い、……あ、もうだめぇぇっ……!」
いくら訴えても、遼はにこりと笑うだけだ。
「まだ足りないよね? もっと気持ち良くなりたいよね?」
度を過ぎた快感は苦しさにしかならない。白濁は既に薄くなっていて、終わりのない快楽に全身が崩れてしまいそうだ。
けれど、身体は快楽を求めていた。
「ぁっ、遼さんっ……」
三人分の精液を受け止めた後孔はひくひくと蠢き、次に飲み込むものを探す。
「えっちで素直なコーキくんはお利巧なペットだよ」
耳元で囁かれ充足感が胸を満たす。遼のペットになれてよかったと心の底から思う。
コーキは足を開き腰を揺らした。
「もっと……、もっと気持ち良く、……してください」
薬のまわった頭で快楽を強請る。身体を熱くする情欲を満たしたくて仕方なかった。
にんまりと満足げに頷いた遼はコーキの髪をぐいっと引っ張って顔を近づけた。
「一生、僕だけのものだよ。コーキくんは気持ちいいの好きだよね? こうしておもちゃみたいに扱われるの嫌いじゃないよね? 僕のペットでいる限り、こうして気持ち良くしてあげる。おもちゃみたいに扱って、僕以外とのセックスじゃ満足できないようにしてあげる」
遼だけのものになる、それがどういう事なのかきちんと理解する事も出来ないまま、こみあげる嬉しさに、何度も首を縦に振った。
後孔に二回目の男の肉棒を受け入れ、ペニスからオナホールを抜かれる。遼はそのオナホールの入り口に、コーキの口の上で指を突っ込み放ったばかりの精液を掻き出した。
コーキは口を開き、自らの精液を受け止める。掻き出される全てを舌で受け止め
「飲み込みなさい」
遼の合図で嚥下する。
喉に引っ掛かるような違和感も、今は刺激的な愉悦に思えた。
「イイコだ。……僕の自慢のペットだよ」
そうして頭を撫でられるのが、何よりも幸せに思えた。
よければお声も聞かせて頂けると嬉しいです!